「ぜんぶ雪のせいだ。」やら「冷静と情熱のあいだ」やら、
いろいろ混じったタイトルになりました。
というのも、部下さんからの苦情を聞いていたら、「個人 vs. 会社の落としどころ」について考えてしまったから。
▷ 「出社したくない部下 VS. 出社に戻したい会社」の板挟みで疲れる
この記事に登場する、「出社が増えるなら辞めます!」と宣言した部下さんが、
出社を増やそうという会社の方針に、再び意見をくれました。
ただね、ちょっとモヤモヤしたんです。
仕事の不満を、「ぜんぶ会社のせいですっ!」って言われると「それはちょっと・・」って思う。
(パワハラ、セクハラ、ブラック企業は除きます。世の中には「ぜんぶ会社のせい」な事例もあると思う。)
しかし一方には、人にはどうしても変えられない、家庭の事情や性格がある。
だから、「ぜんぶ自己責任でしょ? なら会社辞めたら?」と突き放すのも違う気がする。
理解者ぶってるだけじゃないんです。
こちらにも「今は転職しないでー」という、ずるい思惑があるのです。
「個人 vs. 組織」という、究極の問題を抱えたまま、管理職と会社を辞めることになりそう・・・。
- ストレスは「ぜんぶ」会社が在宅させないから?
- 「分かっちゃいるけど変えられない」から不満になる
- 私にも、変えられない性格がある
- さらに会社にも「それ自己責任だよ」って言えない事情が
- 「在宅解除」「出社強制」に対する弁護士の見解は?
- 「個人vs. 組織」という、最後にして究極の課題
ストレスは「ぜんぶ」会社が在宅させないから?
会社の「出社を増やす」という方針に意見がある部下さん。
主旨はこうです。
「在宅勤務の方が生産性が上がるのに、会社は何を考えてるのか?」
「子育てや介護中の社員をどう考えてるのか?」
「通勤電車でコロナなどに感染するかもしれない。出社させるなら危険手当の支給を」
上の二つは同意するけど、三つ目は少々言い過ぎでは・・・?
事務職で、医療従事者などではないし・・・と思ったけど、突っ込まずに
「◯◯さんはそのように思われるのですね。」と傾聴を頑張りました。
クレームの中にサービス改善のヒントがあるように、社員の不満の中に真理がある。
真摯に耳を傾けなければいけません。
だけど今回は、無関係の個人的問題も、在宅勤務の話にかこつけてるように聞こえちゃった。
「ストレスはぜーんぶ会社のせい。私は一切悪くない。」という態度を見ると、
「ちょっと違う気が・・・」と、それはそれでモヤモヤします。
「分かっちゃいるけど変えられない」から不満になる
あまりにモヤモヤして、「だったら、フルリモートの会社に転職したら?」
というセリフが、喉まで出かかったけど、必死で飲み込みました。
(当社及びこの業界は、転職がデフォルトで、この社員も、何度も転職経験あり。)
条件の良い会社に転職ればいい、なんてことは本人がいちばん分かってるもんね。
それができないから、不満になるんだもんね。
私も会社の方針に不満があって、いろいろ考えてセミリタイア、という結論を出した。
だけど、それができたのは、私が身軽だからです。
さまざまな事情で、転職、退職という決断ができない人が多いのは、理解しているつもりです。
私にも、変えられない性格がある
この部下さんも、良い条件の転職先が見つからないか、今は転職できない事情があるのか・・・。
人には、変えたくても変えられないことってあるよね。
家庭の事情とか、年齢とか、どうしても勇気が出ない、とか。
勇気が出ないのは自分の問題なんだけど、性格も簡単には変えられないよねぇ。
もし私が「健康なのに退職なんてけしからん!社会人は働くべきだ」って言われても、
「ごめんなさい、続けるのは自分には無理です・・・」って逃げるかも。
私にも、変えられない部分がある。
だから、現状に不満を言い募る人に、「自己責任です」って突き放すことはできなかった。
さらに会社にも「それ自己責任だよ」って言えない事情が
・・・なんて良い人ぶってますね。
結局は、「ジャスミンさんは、辞めるからいいですよね」と言われるのが怖かっただけかな。
それに、会社の方にも「不満なら辞めれば?」って言えない事情があるんです。
この記事の時は、「出社率を増やして辞める人が増えても仕方ない。Let them go.」
なんて言ってた会社だけど・・・。
▷ 「出社したくない部下 VS. 出社に戻したい会社」の板挟みで疲れる
想定以上に退職者が出ています。
▷ 愛社精神、ありますか?ー同僚がどんどん退職していくのが怖い
表向きはまだ強気で、だからさらに出社率を上げる方針を変えてないんだけど、本社や、上の人たちは内心「これはマズイ」と思ってるみたい。
「出社しないなら辞めればいい」なんて言えるのは、テスラのような人気企業だけです。
私にだって、ずるいと言われそうな思惑がある。
自分が辞める上に、さらにこの部下さんまで辞めたら、残る他の部下さんや後任の負担が増大する。
それはやっぱり、避けたいんです。ずるいかなぁ。
「在宅解除」「出社強制」に対する弁護士の見解は?
在宅勤務をめぐる社員 vs. 会社のバトルは、当社だけじゃないんだろうな、
そう思ってたら、こんな記事が出てました。
在宅を解除し、出社を強制されることについての、弁護士さんの見解です。
これによると、就業規則や雇用契約でフルリモートを約束してない限り、社員に出社を求めても、原則として問題は生じない、らしい。
勤務形態がフルリモートなどと限定されておらず、コロナ禍の中で一時的にテレワーク勤務となっていた方に対して、出社を求めることは原則として契約違反等の問題は生じません。
しかし一方で、予告なく急に出社を求めたら、それは人事権の濫用にあたるかも?とのこと。
テレワークが相当の期間続くという前提で、育児や介護等の負担を負っていた方に対し、いきなり予告なく制度を廃止し、連日の出社を求めるようなことがあれば、出社命令が人事権の濫用であると判断される可能性があるでしょう。
なるほどねー。
当社の場合は、そこまで「予告なき変更」でもないかな。
「個人vs. 組織」という、最後にして究極の課題
はぁ、難しい問題ですねぇ。
社員の不満に耳を傾けないと組織は成長しないから、
意見がどんどん言える、風通しの良い環境を整備する必要がある。
だけど、社員全員の願いが叶えられるわけじゃない。
社員全員ハッピー、みんな笑顔で不満なし、なんて有り得ないし、逆にディストピアっぽいです(笑)。
個人と組織は、利害が対立してる方が、むしろ自然かな。
逃げるような言い方になるけど、やっぱりバランスというか、
両者の合意が得られる落としどころを探っていくしかないんだろうなぁ。
これ以上、出社を理由に辞める人が増えたら、会社も方針を見直さざるを得ないでしょう。
「個人 vs. 組織」という、究極の課題が未解決のまま、管理職の終わりを迎えることになりそうです。
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